Tengo hambre, Ay mi madre

〜テンゴアンブレ、アイミマードレ〜

第2回「アバクアの巻」

「汝の欲するところを成せ、それが法のすべてなり」

魔術師アレイスター・クローリーの言葉、最近よく思い出します。これは「真実は何もない、全ては許されている」というイスラムの仙人の言葉とセットになっているようですが、黒人系の人達は優秀な実践者でしょう。とりあえず過去未来の因果関係を一切考えず、その場だけで発言・行動してしまうパワーを持っている人がたくさんいます。まさにシャーマニック・ピープル!タイム・トラベラー!ま、その分迷惑な人もたくさんいる訳ですが(笑)、その場の集中力は見事なものです。 やっぱり「ビー・ヒア・ナウ!」ですね。常に奇跡を起こそうとする心がけと実践。ポイントです。

さてキューバの男は確かに女好きです。可愛い女の子が通ると道にいる男全員(10代から90代まで)ジーっと穴が開くほど、そしてその子の姿が見えなくなるまで見つめています。日本では反則ですがキューバではありです。もちろん声もバンバンかけます。これをピローポと言いますが、もはや特別な意味はないようです。ほんの挨拶か条件反射のよう。文句も「君はなんて可愛いんだ!」から「その服良く似合ってるね」「そんなセクシーな歩き方を誰に教えてもらったんだい?」「君はまるでバラの花のようだ、僕は君が咲く庭の庭師になりたい」などなど。婦人警官が通ると「僕を鍛えてください!」まで(笑)。

そんなキューバの男どもが集まってやっている、男だけの秘密結社がアバクアです。これもサンテリアと同じくアフリカ・ナイジェリアからやって来てキューバで発展したもので(ただしヨルバ族系ではなくカラバリ族系)、サンテリアと同じくその歌と踊りが有名です。*ルンバのコンサートなどでアバクアの歌が演奏されると男どもはウォー!と大変な盛り上がりよう。みんなハンカチを手に持ってクネクネとアバクア独特な踊りをはじめます。男だけの秘密結社というマッチョなイメージからかけ離れた動き。不思議です。 しかしこのアバクア。アバクアと関係ないキューバ人に尋ねると「アバクアはキューバのマフィアだ」とか「ま、ギャングスタみたいなものだね」という答えがしばしば返ってきます。もっともキューバにはマフィア組織は存在しません。ピストル持ってドラッグ売ってるコワイ系の人達もいるにはいますが、あくまで個人経営のようです。 では一体何なんでしょう?アバクア。さすが秘密結社だけあって詳しいことはほとんど秘密です(笑)。少しだけ分かったことは、アバクワのメンバーになる条件。1、男性であること 2、良き友、良き父、良き息子であること そして3、一度加入した者は秘密結社のメンバーをやめることは出来ない、の3つです。アバクワは宗教団体ではなく(アバシという神を祭る習慣はあるが)、あくまでも男性間の助け合いをもとにした秘密結社であり、もともとは奴隷制の時代につらい重労働から逃れた逃亡奴隷などが組織したものらしいです。

アバクアのメンバーである友人に「アバクアって何なんだ?」と尋ねたらたった一言「男のポテンシャルだ」と答えられました。そんなアバクアの集会に今回参加してきました。写真をどうぞ。 かぶりものをしているのは「イメレ」「ディアブリート」と呼ばれるアバクアの象徴的存在です。これは自分達の祖先の霊を表していてこれが左手に生きた鶏、右手に杖を持ってクネクネと独特な踊りを踊ります。この存在は目も見えず、口もきけず、ただタイコの音だけが聞こえます。ディアブリートは目隠しをして四つん這いになった新しくアバクアのメンバーになる人たちに一人一人に馬乗りになり、背中をサトウキビで突き、鶏でその体を拭います。こうやって穢れを祓うのだそうです。その間中音楽とモウモウとお香は絶えることなく、最高のテンションでコール&レスポンスが続きます。サンテリアの儀式もワイルドですがアバクアはそれ以上にアフリカ・ディレクトです。 今回アバクアのメンバーである友人に集会に連れて行ってもらいました。最初僕はちょっとビビッていたのですが、雰囲気はワイルドでありつつも以外に和やかでした。日曜日の昼下がりに青空の下、男達が集まってビール飲んだりラム飲んだりして和気あいあいと楽しそう。黒人率の高い上半身裸のYMCAボーイズ・クラブという感じでした。 基本的に皆親切で、アバクアじゃない僕にちょっとカウベル叩かしてくれるほどのサービスぶり。しかしアバクアはキューバ人じゃないと入会できないようです。でもお金払えば出来るとか出来ないとか。もっとも僕は入会する気は全くありませんけど。アメリカ生活が長い友人が言った「契約書は最後まで読んでからじゃないとサインしないことにしてる」という言葉。その説得力と共に大事にしています(笑)。でもみんな本当に楽しそうでした&僕も楽しかったアバクア!

つづく。


アバクアの集会所。奥の建物は寺のようなもの。中にはメンバーしか入れない。中からは「ブオーン、ブオーン」と巨大なクイーカを鳴らしているような謎の音が鳴り響いている。尋ねても何だかは教えてもらえなかった。


アバクアのタイコ。大きいのはボンコと呼ばれる。楽器編成はカウベルが*ルンバ・クラーベを刻み、小さい手に持って叩くタイコ3つがポリリズムを奏で、ボンコがソロをとる。


ディアブリート


ディアブリートを呼び誘うタイコ。これは叩くものではなく祭儀用のタイコである。ちなみにこの人が口に咥えているのは鶏の頭。


ディアブリートと共に寺から出てきた十字架。


清め用のハーブ。


メンバーになる儀式のためにハーブで清められる人達。


これからメンバーになるキューバのボクシング世界チャンピオン。体にはアバクアの秘密のサインが黄色いチョークで書き込まれている。


目隠しをされてこれからディアブリートのお祓いを受けるチャンピオン。


鶏で穢れを祓ってもらっている。


ディアブリートの動きを真似て踊るアバクアの人達。


盛り上がっているアバクアの人。儀式を司る人たちはこの格好をしている。

*ルンバ:ソン、マンボ、チャチャチャと共にキューバ生まれの代表的なリズムであり、ジャンル。基本的に大中小3つのコンガとクラーベ、ウッドブロック、歌だけで演奏される。民族音楽のようであるがキューバでは黒人達のポピュラーミュージックである。

*ルンバ・クラーベ:クラーベとはスペイン語で要(かなめ)の意味。リズムの元になる基本パターン。クラーベにはソン等に使われるソン・クラーベとルンバを含めた黒人音楽に使われるルンバ・クラーベがある。

001 / サンテリアの巻
002 / アバクアの巻
003 / ルンバの巻
004 / カルナバル・コンパルサの巻
005 / SALSA!の巻

IZUPON PROFILE
本名、出原亮介。大阪生まれ東京育ち。1992年、アンチ・テクニック・ハイ・センスに憧れ楽器初心者ギャル3人集めてガレージ・パンク・バンド、The Flamenco a Go Go結成。ベース・ギター、作詞作曲プロデュースを担当。3枚のアルバムと2枚のシングルをリリース。うちセカンド・アルバムは当時のインディーズ・チャート10週連続1位を記録、今だ語り草となる。1994年解散。1995年、アシッド体験に強烈な影響を受ける。「ドラムは異界に飛び立つための乗り物である」という言葉に憧れ、楽器をベースからパーカッションに変更。活動場所をライブハウスからクラブ、レイブ・パーティーに移し96年TRIBAL CIRCUS、99年からAOA、NXS、SOFT、TULULULUS等に参加。 2001年、渡キューバ。トランスするキューバ版ブードゥー教・サンテリアの儀式に衝撃を受け、そこで使われる太鼓・バタを習得のためキューバ五大バタ奏者の一人アンヘル・ボランニョ氏に師事。洗礼を受けてサンテリアの儀式でバタをたたく修行の日々。

オススメディスク

Manolin - El Medico De La Salsa [El Puente - Live in U.S.A]   とにかくオススメ!必聴盤!

Los Van Van [Esto Te Pon La Cabeza Mala] 35年以上のキャリアを誇る名実共にキューバNo.1グループ。去年来日も果たした。

Sergent Garcia [Sin Frontera] フランス人ですがキューバン・サルサを演奏。レゲエも取り入れイイ感じです。

Charanga Habanera [Soy Cubano Soy Popular] ちょっとイナたいけど、グルーブは強烈!