Tengo hambre, Ay mi madre

〜テンゴアンブレ、アイミマードレ〜

第3回「ルンバの巻」

「苦悩と孤独は人間の故郷である」by坂口安吾  

えっ!そんな!そんなんいやや!!!  でもこういう言葉って助け舟って言うんでしょうね。確かにそこに行くたびに懐かしい気持ちになりますな。  ではそこから再びいかに飛び立つか? 「酒を飲む。」「ご飯を食べる。」「買い物をする。」  ダメダメ。それじゃ救われまへんな。お金もかかるよ。闇を切り裂け!立ち上がれ! 「歌って踊る!」そして「創る!」  キューバ人が貧しい厳しい生活に耐えて陽気に暮らしている不思議な現実。秘密はコレっす。

「RUMBA!ルンバ!RUMBA!」   

お父さんお母さんから僕ちゃんお嬢ちゃんまで、それが何かは知らなくても何気に聞いたことのあるこの言葉。実はキューバ生まれの純ブラック・ソウル・ダンスミュージックなのです。 ルンバ。キューバでは主に大中小3つのコンガにカタと呼ばれる太い竹で出来たウッドブロック、クラーべ、そして歌とコーラスという編成で演奏されます。メロディー楽器が無いためまるで民俗音楽のようですが、立派な黒人たちの流行歌謡曲。ラブソングから時事ネタ、宗教ネタ、などを黒人スラングをいっぱい混ぜて歌い込まれます。そして踊り手は欠かせません。男女がペアになって踊りながら、男が女の股間を打つしぐさをし、女がそれをかわすルンバ・ワワンコー。男がソロで踊り、自分のパワーを表現するルンバ・コルンビア。ゆっくりとしたビートで男女のペアが踊るヤンブーなどがあり、これら全てを含めてルンバです。

また、これとは別のスタイルでコンガではなくカホンを使ったルンバもあります。カホンといってもフラメンコで使われるアレではなく、キューバ・スタイルのコンガを箱で作ったようなカホンです。これは主に死者を呼び出す儀式で使われ演奏され、編成は大中小のカホン3つとグアタカと呼ばれる鍬の先の部分をクラベスの代わりに叩きます。これに宗教的な内容の歌とコーラスがのり、この演奏の盛り上がりによって人がトランスし、死者の霊が降りてくるわけです。「カホン・パラ・ムエルト」「死者のためのカホン」。

さてこのルンバ。これもやはりアフリカ・ルーツだけあってポリリズムの嵐です。 キューバのリズムはブラジルやアフリカのものと比べると非常に複雑なものが多いのですが、ルンバはその代表格。正直6年前に初めて生で演奏聞いたときはメチャクチャにしか聞こえませんでした。「タイコも行き着くとこまで行くと、もうそれぞれが感じるままに叩く。リズムが合ってるかどうかなんてどうでもいいんだな。」当時の僕は無理矢理そう理解していました。もちろん事実はそうではありません。しかしそれを実感するのに1年かかりましたね(笑)。 何故ならこのルンバのリズム。パーカッションをやったことがある人にはかなりお馴染み「トン・ターンターントン」です。これがもちろん基本なのですがキューバではほとんどこのフレーズが出てこないのです。もう発展しまくっていて、出てきても1小節くらい。あとは怒涛のように空間を埋め尽くすタイコのおしゃべり大会。どこがリズムのアタマかなんてアッという間に分からなくなります。もっともこれはハバナのスタイル。ルンバの生まれ故郷マタンサスのスタイルはもう少しシンプルですね。

ではここでお薦めグループ紹介

・ロス・ムニェキート・デ・マタンサス  
世界的に有名なキューバを代表するルンバ・グループ。初めて彼らを見たときは神の集団かと思いました。あまりにも圧倒的な演奏。サンテリアなど神様を呼び出す儀式のタイコの演奏は独特の張り詰めた緊張感が流れるものですが、彼らはそれと同様の空気を普通のステージで醸し出します。昔はムニェキートを見て震えて泣き出す人続出だったとか。とにかく高く熱いサイケデリック・ルンバ。「Vacunao」「Rumbayambumba]がお薦めアルバムです。

・チャバロンガ  ハバナのルンベーロ
個人的にはルンバ界のフェラ・クティと呼んでいます(笑)。「RAPSODIA RUMBERA」というCDに入っている「Palo Kimbombo」という曲の演奏は圧巻。現在はもういいお年で当時のパワーはありませんが、パンクな爺といった風貌は相変わらずです。一度一緒にスモった時に僕のクラーベに合わせて「Palo Kimbombo」生で歌ってくれました。ちょっと自慢(笑)。

・ロス・ルンベーロス・デ・クーバ
名盤「RAPSODIA RUMBERA」のメンバーがほとんどを占めるハバナのスターグループ。ルンバ界のブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ的存在。渋いです。もっとも演奏はノリノリ。 さてさてこのルンバ。いうまでもなくゲットー・ストリート・ミュージックです。スペイン語でいうならムシカ・デ・ラ・カジェ。黒人の多い地域では人が集まってラム酒が回るとすぐにルンバ大会です。コンガなどなくても叩くものさえあれば何でもOK。クラーべやスティックの代わりにスプーンが楽器です。 BOMBA!*1これを信じられる瞬間は気持ちいいですね。

つづく

*1:BOMBA!直訳すると爆弾。爆発的な気持ちの高まりのこと。そのテンションや気持ちをダイレクトに聞く人の心に伝える演奏が出来るミュージシャンは「ボンバがある!」といって尊敬される。


伝説のルンベーロ、ゴンサロ・アセンシオ。頭の上に「ワワンコーの王」と書かれている。


カホン・パラ・ムエルト


死者のための祭壇。トランス状態に入りかかっている女性。もうすぐ死者の霊が降りてくる。

001 / サンテリアの巻
002 / アバクアの巻
003 / ルンバの巻
004 / カルナバル・コンパルサの巻
005 / SALSA!の巻

IZUPON PROFILE
本名、出原亮介。大阪生まれ東京育ち。1992年、アンチ・テクニック・ハイ・センスに憧れ楽器初心者ギャル3人集めてガレージ・パンク・バンド、The Flamenco a Go Go結成。ベース・ギター、作詞作曲プロデュースを担当。3枚のアルバムと2枚のシングルをリリース。うちセカンド・アルバムは当時のインディーズ・チャート10週連続1位を記録、今だ語り草となる。1994年解散。1995年、アシッド体験に強烈な影響を受ける。「ドラムは異界に飛び立つための乗り物である」という言葉に憧れ、楽器をベースからパーカッションに変更。活動場所をライブハウスからクラブ、レイブ・パーティーに移し96年TRIBAL CIRCUS、99年からAOA、NXS、SOFT、TULULULUS等に参加。 2001年、渡キューバ。トランスするキューバ版ブードゥー教・サンテリアの儀式に衝撃を受け、そこで使われる太鼓・バタを習得のためキューバ五大バタ奏者の一人アンヘル・ボランニョ氏に師事。洗礼を受けてサンテリアの儀式でバタをたたく修行の日々。

オススメディスク

Manolin - El Medico De La Salsa [El Puente - Live in U.S.A]   とにかくオススメ!必聴盤!

Los Van Van [Esto Te Pon La Cabeza Mala] 35年以上のキャリアを誇る名実共にキューバNo.1グループ。去年来日も果たした。

Sergent Garcia [Sin Frontera] フランス人ですがキューバン・サルサを演奏。レゲエも取り入れイイ感じです。

Charanga Habanera [Soy Cubano Soy Popular] ちょっとイナたいけど、グルーブは強烈!