ZEN RYDAZ『ZEN TRAX2』
MACKA-CHIN × MaL Interview
「ZEN RYDAZってやつはどんなものができるのか予想がつかない」(MACKA-CHIN)



—前作『ZEN TRAX』に続き、2ndアルバム『ZEN TRAX2』の制作までの流れはどのような感じでしたか?

MaL:2019年に『ZEN TRAX』をリリースして、2021年の頭にヴァイナルになったんですけど、2020年にコロナが始まり、各々がZEN RYDAZではない活動を行っている中で、 「コロナだしなんかやれることをどんどんやっていこう」ってマッカ(MACKA-CHIN)と話していて、「ZEN(ZEN RYDAZ)も新しいの作っちゃう?」 って、Moochy主導っていうよりは割と俺とMacka主導だった気がするんだけど。

MACKA-CHIN:そうだったかもしれない。3人各々がやっていたんだけど、MaLとは別の仕事で会うことが多くて。それこそ次のNITROの新曲はMaLなの。その流れもあってMaLには会うことが多くて。で、ZEN RYDAZみたいなグループも続けていくとリスナーも楽しいと思うし、俺らもよりアップデートするのにいいなと。ZEN RYDAZってやつはどんなもんができるのか予想がつかないから。それで、ちょっとやってみようよって感じで始まったって感じかな。

MaL:始まったらそれはそれで、Moochyがスケジュールをきっていくわけよ……「じゃあ、次の満月までに」とか、そういうあれがね、どんどん、どんどん(笑)。 そんな感じで始まったら、やるならとことんのMoochyに火がついてしまって、それでこのアルバムの1曲目になる「WISDOM」、それと「SLOW BURNING」、「VEDA」の原型ができていって、その3曲をまず作ろう、 実験的にまた新しく曲を出したらいいんじゃないって感じで。Moochyがちょうどコロナ渦がはじまる直前にインドに行ってて、それで超インディアバイブスで帰ってきて、俺たちはいろんなYouTube見せられてたから、 「WISDOM」や「VEDA」とかのあの太鼓の感じとかは超インドのテイスト入っていて……入っていてっていうか、Moochyが見たインドを俺らが伝えられて、それを俺たちが「なるほどね~」っていって再現していった。 だから、俺らもインドに行った気になっていたという(笑)。

MACHA-CHIN:そうだった(笑)!

MaL:それでなんか3曲、デジタルで立て続けに出したんだよね。そこからどんどんもっと作ってアルバムにしたいっていう話になっていって。ちょうど『ZEN TRAX』をバイナルで出すきっかけをマッカが作ってきてくれたのもあったし、 じゃあ『2』にして形にしていこうよというところで曲が増えていった。その間、「WISDOM」と「VEDA」なんかはリミックスをいろんな人に頼んだり、自分たちでもセルフリミックスしたりして、超たくさんリミックスを作って。 ぶっちゃけ一番始めに出た「WISDOM」と「VEDA」は、もうアルバムに入っているのとは全然違うんだよね。マッカは「WISDOM」やってたっけ?

MACHA-CHIN:俺は「VEDA」をやってんの。これ書いて欲しいんんだけど、1月1日に ZEN RYDAZとは別に、俺個人でBandcampのアカウントを作って「VEDA」のMACKA-CHIN REMIXっていうのを出したの。 そこに「VEDA」のリミックスあげたんだけど、今の時点で1人も買ってくれてないの! Bandcampって毎月1人でも売れていないと、丁寧に「今月もダメだったよ、君!」ってメールがくるんだけど……それをスクショしてプロフィールにしたいくらいなんだけど、 俺なんで27年も音楽やり続けてこれたんだろうって。確かにその曲、みんなと違うテイストで作っているから、明らかにリミックスのリミックスぽい作りなのよ。でもダメだったね。で、Moochyが「俺が買う」って言ってたんだけど、それはやめてねって(笑)。

MaL:っていうか、みんなそこに辿りついていないだけなんだよ(笑)

「でき上がってきたものを聴いたらすごくフレッシュだった」(MaL)

―最初に制作した3曲は、どれも一辺倒ではない感じですね。

MaL:そんな感じでリミックスをいろいろな人たちに頼みつつ、海外のアーティストの人たちにもヴォーカルフィチャーを頼もうとか思ってたんだけど、コロナ渦にも関わらずMoochyがどうしてもライヴをイメージしてやりたいとすごく言っていて。 俺とはその件で言い合いになっちゃったりして、だけど俺やマッカは日本の歌い手さんとはよく仕事しているけど、Moochyはあまりしていないからフレッシュさも彼の中にはあったみたいで。結局、でき上がってきたものを聴いたらすごくフレッシュだったし、 コロナ渦で国内のアーティストとやってアルバムをライヴで再現するというMoochyの目標に向かってやっていくうちに、結果的にはいいものになったなって。




―アルバムを制作するとなったとき、最初にテーマを作りましたか?

MaL:なんとなくテーマみたいなものはあって、やっている中で割りとMoochyが決めていったというか。1曲目から10曲目まで曲のパーツができていくごとに、先に曲順が決まっていったんですよ。 普通は曲ができ上がってから、曲順って考えるんじゃないの? ってとこなんだけど、Moochyの中では曲順ができていたから、どちらかというと「この曲とこの曲があるから、ここは女の子がいいよね」とか。 そこに今回は、全曲にマッカの声が入っているじゃないかな。

―MACKA-CHINさんの声が各々の曲に入っているのがすごくよかったです。 ZEN RYDAZだなと認識するひとつの要素というか。

MaL:俺も何気に前作の「NU-BORN」が好きだし、前作と違うのはその部分だよね。

MACHA-CHIN:そうそう。だから今回は、逆にプロダクションとしてはヴォーカルに徹したんだよね。さっきMaLが言ったけど、すでに曲順が決まっていてアウトラインはできていたから、塗り絵じゃないけどそこに色を付けていって、 これは赤じゃないから上に緑を足していったら黒になったとか、一色では終わらない。色の上に色を塗っていって油絵みたいに作っていって、その上のコンセプトにライヴを行うってことがあって、 その中で自分のキャリアでやってきたヴォーカルというか、ヴォイスというか、ラップというか、それをもっとバンバン入れてこう!って感じで、今回は自分の声を入れていった感じ。アレンジはMoochyが案を出して、 音質とかをMaLが総体的にみて、各々がこれまでに活かしてきた総体的キャリアや得意分野で、各々の力を発揮していったっていう。

―MACKA-CHINさんはラップをするにも、いろいろな引き出しがあるかと思うんですが、どの部分を今回は出されましたか?

MACHA-CHIN:まず各々の曲に主軸の歌い手さんがいるので、その曲のコンセプトに寄り添って考えるというか。彼ら、彼女が思うことに寄り添って考えないと、自分が言っていることが嘘になっちゃうし、嘘は書けないじゃん。 だから「こうきたか」みたいなことを自分の中に落とし込んで、出すみたいな。ヴォーカルもただ単にフラットに乗っけるんじゃなくて、エフェクトをかけるとか、ディレイをかけるとか、いろんなやり方があるんだけど、そこも今まであった引き出しを全部出した感じかな。

MaL:ゲストヴォーカルが多彩な中で、ZEN RYDAZのキャラにもう少しこういうのがあった方がいいなと思うテイストを、マッカがどんどん埋めていってくれた感じはあるよね。

―料理に例えれば、最後ZEN RYDAZ風味にまとめあげてくれたというか。

MACHA-CHIN:俺の場合、料理に例えたら味付けというよりは、見栄え担当かもしれない。

MaL:楽器的な扱いをした声もあったよね。サンプリングになるような。

MACHA-CHIN:そう。だから聴覚よりは、視覚的というか、見栄えをよくしたって感じかな。だから今回は、本当に最後に自分の声を入れたの。スタジオワークもある程度曲がフィックスしているところに、 俺が一番最後にヴォーカル録りをしたし、その後にMoochyのアレンジとかも入ってくるんだけど、基本的には俺が帯紐を締めるみたいな感じだったかな。まあ、俺がダラダラしていたのもあるんだけど、 基本的にはゲストさん優先でスケジュールを組むし、3人集まっている中で俺が一番最後まで仕事していたかも(笑)。

「実験的という言葉を使わせてもらうなら、贅沢に実験をさせてもらっている」(MACKA-CHIN)




―現時点で、ZEN RYDAZが掲げている目標はなんですか。

MACHA-CHIN:やっぱりライヴをすることなんじゃないかな。制作過程でもひたすら出てきた言葉だったしね。

MaL:ZEN RYDAZってこういうジャンル、というカテゴリーがないというか。もちろんビートのタイプとか、打ち方とか、マナーとかいろんなジャンルを聴いてきた上で、 各々の引き出しから引っ張っきて作っているし、ラップとかも含めてスタイルが全部混じっているから、ある意味、本当に新しいものを生み出したいという気持ちでやっているんだよね。 コロナでエンターテイメントが不要不急な中で制作をして、やっぱり一矢を報いたいじゃないけど、「これ新しいじゃん」ってなって、それが次の何かのきっかけになれるように模索しているというか。 よく「実験的な音楽を……」とかインタビューで見るけど、俺にはそういう実験的に音楽を作る発想はないんだけど、結果的にZEN RYDAZって実験的だったんだなと後で思わせられたというか。 テーマはもちろん、自分たちが持っているものを持ち寄って格好よくなんだけど、結果どんどん新しいものになっているなって。

MACHA-CHIN:ないものを作る。作っているときに「自分は何を作っているんだろう」、「どうなるんだろう」っていうところだよね。もしも実験的という言葉を使わせてもらうとしたなら、贅沢に実験をさせてもらっている。 それは制作費とかの話じゃなくって、マインドと、向いているベクトルと、それと演者さんたちの存在。俺ら3人はすっぽんぽんでいいけど、ZEN RYDAZは演者さんありきで成り立っているグループだし、 楽器、ヴォーカルを含めてすごいメンツなので、そこはすごく贅沢をさせてもらっている。新しいアルバムが今の時代にハマればもちろん最高だし、やっぱり長生きできるもの、クラシックになるようなものになるといいなって。

―新しいものって事例が他にないので、まずは言葉にならない衝撃を受けることになると思うんですが、ZEN RYDAZはまさにそういうイメージで、あとはこのマッシュアップ感は一体なんなんだろうと。

MaL:そのマッシュアップ感が前作よりもあるのは確か。前作はなんだかんだ3人の要素の出し方が、まだまだ雑だったんだよね。だけど今回は丁寧に、ここはこうしよう、ああしようというのを3人が構築していっているし、 雰囲気や細かい世界観はMoochyが指揮をとって、俺もマッカもそれに寄り添うじゃないけどついていく。だからやつ(Moochy)が映画監督で、マッカが主演男優で、俺はカメラマンみたいな役割というか、 俺たちは一つの作品を作るプロデューサーチームなんだけど、ちょっとづづポジションを補いながら「一番得意なところを出して使っていこう」みたいな。だから音としてまとまったのかもしれないよね。

「『そんなの関係ない』って、それがなんかまかり通るのがZEN RYDAZ」(MaL)

―演者さんはどういう視点でセレクトされていますか? ZEN RYDAZとなったときに、タイプ的にはどんな方を?

MaL:前作から引き続きお願いしている人もいるし、新しくお願いをしている人もいるし、ヴォーカルチームは割とマッカが選んでいる感じかな。

MACHA-CHIN:この曲には誰が合うかなって話になったときに、ヴォーカルに関しては2人よりも候補出しが多いのかもしれないですね。ZEN RYDAZに関しては普段ジャンルを持っていない子というか、耳が和らい子というか、 頭が柔らかい子というか、言い方に語弊があるかもだけど、オールジャンルいける子というか。音楽性が豊かな子でないとっていう。ラップに関しては、どのジャンルでもBPMが早くても遅くてもラップが乗ってくればヒップホップになるから、 だからスキルは絶対条件だよね。演者の人たちは、みんないい意味で我が強いから一緒にやっていて面白い。俺みたいに音楽を27年やっていると、ぬるいレコーディングとかもあるんですよ……「早く終わらせてシャンパンあけよー!」とか、 「もう一回やってとか失礼だから言えない」とか。まそういう日本人的な全体主義の感じがあったりするけど、ZEN RYDAZは本当にダメだしをすごいするし、俺なんかMoochyにずっとダメだしされて、「この鬼!」ってずっと言ってきたし(笑)。 Moochyのディレクションは熱くて、逆にヴォーカルをやってきていないからこそ、ケロっと言えてしまう角度を持っているところが面白いんだよね。「もうちょいいけるから、もう1回!」みたいな。 そんなの俺、「マジ20年ぶりくらいに言われてます!」、「頑張ります!」って。もちろん心削られるけど、だけど一往復すると生まれてくるものがすごく光る。だからZEN RYDAZはハードル高い制作だと思います。 もともとPRO TOOLSがなかった時代は、デジタルで後でどうにかなるみたいなことは一切やらなかったし、ZEN RYDAZはそれと同じでフィルム映画みたいな感じだよね。

MaL:Moochyはある意味、常識外れというか(笑)。俺もそうだけど、普通はこうって音楽のセオリーでやってきた中で、だけどMoochyからしたら「そんなの関係ない」って、それがまかり通るのがZEN RYDAZ。 だから俺の中では塾みたいなもん。俺もスキルアップしたし、みんなもスキルアップしちゃってて。

―2ndを聴いたときに、前作よりも更に輪郭がでてきたのかなと感じました。

MaL:そうそう、そうなんだよ。音像もそうだし、Moochy自身もそこは納得していると思うけど、なんかステージが二段階くらい上がった。

MACHA-CHIN:俺がこれから大切だなと思うのは、提示していくことの重要さというか。どんどん外へ出していくことで、さらにZEN RYDAZぽくなっていくと思うんで。 今回、「THAT IS GOOD 絶景」のシリーズでライヴを撮影することになったんだけど、ライヴを配信で行う時代になってきたから、コロナ渦でまだ現場がままならない中で、そうやってライヴのフルセットをしっかりYouTubeで上げていくことも大切かなと。 前回はPVを作ったけど、やっぱり音楽は映像になった瞬間に離れていくから。というのは、音楽というものは聴いた人たちの想像力の中で完結してもらって、そこをみんなと共有するのが理想だから。だからいいものができたかどうかを見失ってしまうこともある。 だからできる限りライヴとかを重視してやりましょうって。

―あともうひとつ、今回のアルバムに入っている曲は、幅広い現場でプレイできる曲が多いなと思いました。

MaL:今日、「ONENESS」でインタビューをさせてもらっているけど、俺は明日の朝DJをするんですよ。Moochy的に、アルバムの最後のミックスダウンをMaLがやる前に、フロアというものを目標にして勘を取り戻して欲しいから、 無理矢理でもDJをやって欲しいって。コロナ渦だったのもあるし、怪我で入院していて数ヶ月DJをしていなかったのもあるから、確かにフロアという感覚が鈍っていたし、ある意味リハビリだって言われて。 フロアに音を投じることを思い出してくれたら、ミックスダウンするときにいいだろうって。来週、最終のミックスダウンの作業をするから、それまでに勘を取り戻す。とにかく踊れるか、作りながら立ってみて体が揺れるかどうか、 みたいなのはすごく意識して作ってきているんだけど、間違いなく『ZEN TRAX2』は自信作になっていると思います。

MACHA-CHIN:うん。本当にそうだね。クラブミュージックとかに慣れちゃっている子たちがワクワクドキドキするような作品にはなっていると思うんだよね。「このヴォーカルきた~!」とか、「この音きた~!」とか。音の処理含め。

MaL:なんかまとめに入るような形になってしまったけど。現時点での精一杯というか、悔いのない作品にはほぼほぼなってきているなっていう。それを今日、まだリリースされてもいないのに、全曲ライヴをするっていう。 だけどほぼ積み上がったと思うから、早くみんなに聴いてもらいたい。


























*こちらのインタビューは、10月9日に開催された「MOVEMENTS ONENESS GATHERING」の会場にて取材をさせていただいたものになります。



Photo:Nobuhiro Fukami @ Movements Oneness Gathering 2021
Text:Kana Yoshioka
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