KENJI IKEGAMI / KANNON
KOKO-136(CROSSPOINT) / RFLP008(17853 Records / Digital
Available on Bandcamp (Digital), NXS Shop (Vinyl)


KANNNON(観音)は、池上による尺八と、瀬藤康嗣による即興演奏を主体としたチェロのデュオ曲である。小川のせせらぎ、小鳥のさえずりのごとく静かに浮遊する鳴り物が竹林の風景を想起させるイントロダクションから、 尺八のひと吹きがはじまる。尺八のロングトーンは残響を伴いながら積層され、ドローンを形成する。インスピレーションを得たチェロは奔放に旋律を重ね合わせていく。ふたつの楽器の音色と旋律は相反することなく、 不思議な音像を描きながら静かに頂点へと向かい、やがてふたたび、静謐な竹林へ同化していく。

RAVENは、2021年に東京のおおばキャンオプ村で開催されたフェスティバル<Oneness Gathering>でのライブ・レコーディング音源である。アイヌの伝統民族楽器であるムックリを演奏するUtaEと、 池上の尺八とのデュオ、すなわち、竹と竹の共演である。尺八の音色が持つ特有のふるえを随所に効かせながら、パースペクティブな音像を描いていく尺八のアンビエンス。その中央でムックリの奏でるビブラート音が太陽光線の如く降り注ぐ。

TRACK LIST

01. KANNON 観音
      Shakuhachi : KENJI IKEGAMI
      Cello : デンカ DENKA
      Arranged & Mixed : Takashige JAKAM Miyawaki

02. RAVEN 鴉 (LIVE @ MOVEMENTS ONENESS GATHERING 2020)
      Shakuhachi : KENJI IKEGAMI
      Mukkuri : UTAE
      Cordinated & Treated : Takashige JAKAM Miyawaki

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Design : GINJI
Mastering : SINKICHI
Produced by Chee Shimizu

なんて素晴らしい楽曲の組み合わせだろう。美しく調和の取れた音楽が、時間が止まったかのようなディープ・ゾーンへと私を運んでくれる。

ジョニー・ナッシュ(音楽家 / Melody As Truth主宰)


「KANNON」は、尺八の多様な奏法をあえて使わずに、シンプルな持続音に徹することで、一音の響きの内的な豊かさと、とても微妙な変化に聴覚を集中させ、重厚なレイヤーのなかの無限の拡がりへと解放される気持になりました。音が現れる瞬間、通り過ぎ、消えてゆく時間が、美しいです。 「RAVEN」は、尺八の伸びやかで繊細な音の表情がとても美しく、 ライブ録音とは思えない完成度に驚きました。ムックリの落着いた時間の刻みと調和し、幽冥の次元へと通ずる音楽であると思いました。後半の高い音域とムックリに息を入れて低い倍音を響かせているところも、とても好きです。この緩やかな展開に魅せられました。

石川 高(笙奏者 / 古歌謡演奏家)


正にディープ・リスニングに相応しい音の心象風景/精神のサウンド・スケープに耳を奪われる。邦楽器の現在地点においても極めて独創的なのではないだろうか。

井上 薫(DJ / 音楽家)


日頃から「ジャンルとか関係ないよね」とか言いつつ、聴いてビックリ「これ尺八なの?」と自分がいかにの既存のイメージに囚われていたことか、言うなれば「耳からウロコ」!非常に耳に心地良く深い響きと、まさに自然環境と一体化して共に呼吸するような音響の展開に、いつの間にか竹林に迷い込み、自分がどこにいるのかわからなくなるような、瞑想の迷宮のような体験。音はすべてを物語る、とあらためて実感しました。音のバランスも絶妙で素晴らしいです。このような即興演奏は、個が唯一性を発揮しながらも全体の調和を成す一部であり、自然界には一つとして同じものが存在しないという忘れがちな驚異を思い出させてくれます。

宝達 奈巳(ヴォーカリスト/シンセサイザー奏者/作曲家)


正直に言ってこのふたつの楽曲は、私が長いあいだ聞いたなかで最も奥深く、最も強烈な音楽だ。活気に満ちたサウンドは聴き手に集中を促し、遠くまで連れて行ってくれるが、一歩も動くことなく、内面に響き、まるで隠されている生きた和音に触れるかのようである。長い呼吸のような美しさ、海が私たちに与えてくれる物語、春を告げる速い雲、花と牧草地の香りがする風、踊る木々の何千もの葉…。 心に語りかける素晴らしい音楽だ。

ジジ・マシン (音楽家)


古楽器らしからぬアブストラクトなトーンに驚きました。稠密なサウンド・スケープに音楽文化への愛を感じます。

森田潤(電子楽器奏者 / DJ)


整いました 現代に必要なセラピーとでも言いましょうか 時間芸術においての時間の意味 心が見えてくる鏡の様な音が描く世界 現代社会に足りてない自分へのご褒美 雅楽の様な宇宙感 尺八にムックリそしてチェロ KENJI IKEGAMIの創造するハイブリッドな音の感覚は眠る遺伝子を奮い立たせてくれる CROSSPOINTからリリースというのも含め まさに 気づく というメッセージが伝わる素晴らしい大切な作品 日常に取り入れていきたい音楽という時間 ありがとう

MACKA-CHIN(ラッパー / DJ / NITRO MICROPHONE UNDERGROUND / ZEN RYDAZ)


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What an amazing pair of compositions, beautifully balanced music that transports me to a deep zone where time stands still.

— Jonny Nash (Musician / The founder for Melody As Truth)


"KANNON" achieves a profound listening experience by deliberately avoiding the diverse techniques of the shakuhachi and instead focusing on simple, sustained tones. This approach allows one to concentrate on the inner richness of a single note’s resonance and its delicate nuances, creating a sense of release into the infinite expanses within its deep layers. The moment a sound emerges, passes through, and fades away is truly beautiful. "RAVEN" showcases the shakuhachi’s expansive yet delicate tonal expressions with remarkable beauty. I was astonished by its level of perfection, making it hard to believe it was recorded live. The piece harmonizes with the steady pulse of the mukkuri, evoking a sense of music that connects to a spectral dimension. I particularly love the latter half, where the high-register tones of the shakuhachi intertwine with the breath-infused mukkuri, resonating with deep overtones. I was utterly captivated by the gentle unfolding of this piece.

— Ko Ishikawa (Shō player / Ancient Kayō performer)


This is captivated by an auditory landscape of deep listening—an immersive soundscape of the mind. Could this not be one of the most uniquely innovative expressions in the current realm of traditional Japanese instruments?

— Kaoru Inoue (DJ / Musician)


Although I often say, "Genres of music don’t really matter," I was truly surprised when I listened to it and thought, "Is this really a shakuhachi?" It made me realize how trapped I had been by my existing preconceived notions. It's like a "eureka moment" for my ears! The deep resonance that is incredibly pleasing to the ear, along with the sonic development that feels like it’s breathing in unison with the natural environment, gradually led me to feel as if I had wandered into a bamboo forest, losing track of where I was—a meditative labyrinth-like experience. It reaffirmed for me the truth that sound tells the whole story. The balance of the sound is also exquisite and remarkable. Such improvisational performance reminds us of the forgotten awe that in the natural world, nothing is ever the same—while each individual expresses their uniqueness, they also form part of the overall harmony.

— Nami Hōtatsu (Vocalist / Synthesizer player / Composer)


I'll be terribly honest: those two tracks are the deepest and most intense I've heard from a long time, a vibrant sound that takes hold of your attention and takes you far, but without moving a step, as if it sounded inside, touching hidden and alive chords. Beauty, like a long breath, a story that the sea gives us, fast clouds that announce spring, wind that smells of flowers and meadows and a thousand leaves of dancing trees.... Gorgeous music that speaks to the heart.
— Gigi Masin (Musician)


I was surprised by the abstract tone, which is not unlike that of old instruments. The dense soundscape shows a love of musical culture.

— Jun Morita (Electronic instrumentalist / DJ)

KENJI IKEGAMI

地無し尺八 製管師 / 演奏家

2004年頃より日本各地に古来から伝わる曲 虚無尺八(古典本曲)をライフワークとして尺八を始める。
その後虚無尺八を中心として、インプロビゼーションやドローンミュージック等 原始的な手法を取り入れ、音源制作・トラックメーカーへの音源提供・演奏活動を行う。また2010年からよりオリジナルを求め、 尺八製作を開始。8年の修行を経て2018年「池上銘地無し尺八」を立ち上げる。自然の響きに焦点をあて製作される池上銘は、濃密で有機的な倍音を生み出し、古典本曲演奏家に評価されている。 現在、竹林をゼロから作るプロジェクトも始め、自然を通した音作りの幅を広げている。

Jinashishakuhachi maker & player

Kenji Ikegami started playing shakuhachi since 2004, with playing Komujakuhachi(Honkyoku), as his lifework.
While he focuses on the komujakuhachi, his music performance incorporating primitive music techniques,improvisation, and drone music. He also provides these sound sources to track makers.
For seeking more original sounds, he started making shakuhachi.After eight years of craftsmanship training, he started his original shakuhachi brand “Ikegami Meiji Jinashi'' in 2018.Each Ikegami Jinashi is handcrafted, focusing on producing the bamboo's natural sounds. Ikegami Jinashi creates an organic sound full of brilliant richness and depth when you play the instrument and has gained recognition by Shakuhachi Honkyoku players.
Currently, he has started a project to make bamboo forest from scratch and expanding the possibility of creating sounds from nature.
瀬藤康嗣(デンカ)
音楽家、チェリスト。
4歳からチェロを学び、高校時代に現代音楽やフリー・ジャズを聴きはじめる。1992年、ボランティアで参加した<アートキャンプ白州>でデレク・ベイリーらの演奏に触れ、即興演奏に開眼。サックス奏者のカナイタダヒコ(現Colored Rice Men)、ドラム、チェロのトリオ編成によるユニット、POOLを結成し、即興演奏をはじめる。この時期に録音されたサックス奏者の大蔵雅彦とのセッション音源が、コンピレーション・アルバム『Silverization』( Soup-Disk)に収録される。
1994年、アンディ・ウェザオールとジェフ・ミルズに衝撃を受け、テクノDJとしての活動を開始。同時期に世田谷美術館の学芸員、長谷川祐子(現金沢21世紀美術館長)のアシスタントとして、 アメリカ人現代美術家マシュー・バーニーやアーティスト集団ダムタイプの制作アシスタントを務める。1997年、東京から鎌倉へ移住し、メディア・アート・ユニットflowを結成。国内外でプロジェクトを展開する。 作品制作活動がメインとなり、チェロの演奏から離れる。
2006年、アート・コレクティブROOT CULTUREを結成し、鎌倉を拠点にフェスティバル、シンポジウムやワークショップを多数企画。作家、高橋源一郎の代表作「さようなら、ギャングたち」をベースに、 ニューヨーク在住のコレオグラファーであるヨシコ・チューマによる演出の舞台作品「根の国のギャングたち」のサウンドを手がけ、高い評価を得る。これによりニューヨークのコンテンポラリー・ダンス・シーンとのつながりを強め、 振付家アースラ・イーグリーとともに『SELF MADE MAN MAN MADE LAND』(2012-15)、『Piece With Gaps for Each Other』(2016-18)を制作。日本、ニューヨーク、メキシコ、マケドニアで上演し、 ニューヨーク・タイムスでも高い評価を得た。
コロナ禍をきっかけに、鎌倉での作品制作に没頭。鎌倉のベイカリーParadise Alleyの勝見淳平の依頼で開発した、植物や発酵食品の生命活動から音を生成するデバイス<NOW HEAR MACHINE>を用いた作品を数多く制作する。 また、鎌倉に移住したクリエイティブ・ユニット生意気のマイケル・フランクとともに活動を展開。天然酵母の生地の発酵プロセスを音響化しつつ、最後は生地を焼いて食べる<ヤマガタ 秋のパンまつりで山形ビエンナーレ2020に参加。 <NOW HEAR MACHINE>をきっかけに、日本に移住した音楽家テリー・ライリーとも知己を得、2022年春からテリー・ライリーによる音楽教室<KIRANA EAST>の主催を開始する。
また、<NOW HEAR MACHINE>をりんごの果樹につなぎ音響化されたりんごの生命活動の音を、振動スピーカーを用いてりんごの果実そのものから聴く作品《Apple Phone りんごのヘッドフォン》を、 2022年にあんざい果樹園(福島)で発表。弘前りんご公園でも発表し、マスメディアやネットメディアでも話題になる。
2022年元旦、約25年ぶりにチェロに触れたところ、バッハの「無伴奏組曲」を身体が覚えていたことに感動し、再び演奏をはじめる。テリー・ライリーともプライベートでセッションをする機会に恵まれ、 テリー・ライリーからドローン楽器としてのチェロの可能性を示唆される。また、シタール奏者ヨシダダイキチと歌手YahYaとの演奏にも招かれ、チェリストとしての活動を再開する。
UtaE
ムックリ奏者、ハポネタイ代表。
2009年に母とともに北海道清水町にハポネタイ(母なる森)を構え、 現代を生きるアイヌの個人史採録とアイヌ・アートの展示やライブに取り組む。その後一時休止を経て、2020年、母より代表を引き継ぐ。 アイヌの口琴楽器ムックリ奏者/パフォーマーとして国内外でアイヌ文化の伝承と交流に努める。2014年、ドイツで開催された国際口琴大会に参加。アニメ『ゴールデンカムイ』では、ムックリのパートを担当している。 近年は教育機関を中心にアイヌ文化を伝える講演やワークショップを、リアル会場/オンラインにて開催。 2021年5月より、エフエムおびひろ(JAGA)『anu anu~母なる森 ハポネタイ~』にラジオ・パーソナリティとして出演中。
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